柴俣 慧「禁扉」
- 薄暗い納屋の中、時が経つのを忘れ一心不乱に探し続けた。通気口からは西日が入り込み、背丈ほどある姿見に反射して奥の壁を照らした。錆びがこびりついた金庫と壁の隙間に、何やら細長い巻物のような筒状の物が挟まっている。之が曾祖父の話していた呪詛の書だろうか。恐る恐る掴み取ろうと手を伸ばした時、強い力で物置の戸が引かれた。「おい、そこで何をしている?」振り返ると一郎が立っていた。「なんだ三郎か。驚かせるな。こんな場所で何をやってるんだ?」畑仕事の道具を戻しに来た一郎が尋ねる。「ちょっとした探し物だよ」「そうか、なら暗くなる前に片づけておけよ。これじゃ足の踏み場もないじゃないか」そう言うと、一郎はそそくさと納屋から出て行った。